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[Interview / RUBY LEMON]
2024-09-26 update
LA在住のシンガーソングライター/トラックメイカーRUBY LEMONと、Masami Takashimaのスプリットがリリースされた。両者に共通するのは、エレクトロニカ、シンセポップ、アンビエント、ビート・ミュージックといったモダンなエレクトロニック・ミュージックの最良の部分を掬い取りながら、日常と非日常を自由に行き来するような響きを持つ「歌」が聴こえてくる──そんな作風だろう。両者がそれぞれ制作した3曲(全6曲)が収録された本作は、互いが互いのカラーを侵食することなく、また一方がもう一方に寄せることもなく、冷静な距離感を保ちながらも、清々しいある一つのムードを聴く者に与えてくれる。スプリットの制作、実際の作曲がどのように進行していったのか。LAのRUBY LEMONにメールにてインタビューを行なった。
(インタビュー: 小鉄 昇一郎 ミュージシャン/ライター) https://kotetsu-shoichiro.com Instagram https://www.instagram.com/y0kotetsu/──そもそも、Masami Takashimaとはどこで知り合ったのでしょうか。
私も元々は福岡のバンドシーンで活動していたので、Masami Takashimaさんのことは存じ上げておりました。なかなか直接ゆっくり話す機会はなかったのですが、Takashimaさんのバンドmiu mauさんのイベントのBGMを作ったこともあります。Takashimaさんは福岡にいた頃からイベントをオーガナイズされてましたし、アーティストというだけではなく、実務家というか、キリリとした聡明な女性というイメージがあります。私と正反対です(笑)。ですが女性のトラックメイカー人口も少ないですから、お互い共鳴しあうものがあるんだと思います。
今回はTakashimaさんからメールでスプリットEPを一緒にリリースしませんか?と直接ご連絡頂きまして、私も丁度EPをリリースすることを考えていたので、是非やりましょう!と二つ返事で引き受けました。
──スプリットの制作はどのように進みましたか?LAと香川、おそらくはリモートのやり取りが中心だと思われますが。
今回のEPは特になんの制約も無かったので自由でやり易かったです。ただ、個人的にはTakashimaさんの曲と並んだ時の曲のバランスをイメージしたりしながら制作を進めました。
──制作環境についても教えて下さい。機材などは何を使っていますか?
DAWはLogicを使っています。クラブミュージックや現代音楽とか、そういうジャンルだったらAbleton Liveを使っていたと思うんですが、自分が作るポップ・ミュージックだと、今のところLogicが使いやすいですね。
インターフェイスはMOTUのM4、スピーカーは定番のYAMAHA のHS5を使ってます。もっといい機材も欲しいんですが、お金も限りがありますし、私の根本精神はダニエル・ジョンストンなので、(私のはエレクトロミュージックではありますが)基本、既にあるもので作る、といったスタンスです。
──今回、作られた三曲について、一曲一曲を取り上げて解説していただけますか。歌詞のテーマや制作について聞かせて下さい。“Honey Bee”
元々リードシンセのリフが出来上がった時に、シンプルな構成がいいなと思って作った曲です。後半の展開も、頭に思い浮かんだイメージをそのままを再現しました。そしたらLana Del Reyも同じような展開の曲を作っていることを、スーパーマーケットのBGMで聴いて知って「しまった」と思いました笑。
歌詞は「あなたの夢の中にミツバチになって現れることができたらいいな。腕をチクッとさして、そのままさようなら」という内容の歌です。
“Never Coming Back”
これも元々短いサウンドスケッチから生まれた曲で、やっぱりLo-Fi感を意識しています。後半はSP-404というサンプラーを使ってぐちゃぐちゃに加工して遊びました。
歌詞は「二度と戻ってこないからあなたの今までの記憶をここに置いていって冷凍保存して。そして私のハートの中で温めて溶かす」と歌っています。
“Gray City”
これは元々作り貯めておいた曲です。カルフォルニアってみんな車移動だから、大気汚染もあるし、アスファルトの照り返しだったりで、夏はすごく暑くなるんです。40度を越えちゃったり。砂漠の気候だからというのもあるんですが、昔はこんなんじゃなかったってみんな口々に言っていて。日本もそうかも知れないんですけど。
なんかもう年々、そろそろ地球が終わるんじゃないかなって気がしちゃうんですよね。でもそれも全部人間の生活のせいなんですよね。そういう矛盾した悲しさとか虚しさが投影された曲になりました。
──確かに、日本も今年の夏は40度を超える日が頻発しました。LAに住んでいて、街の風景や気風が作る音楽に影響はありますか?
基本的に自分のスタンスは日本にいた時と変わらないんですが、なんとなく、太陽の光とかドライな感じの空気、陽気な楽しい人達とか、見えている風景から少しずつ感性に影響を受けているのかもしれないと思いました。
ただやっぱりLAに住んでいると、至る所にホームレスの人たちが路上で暮らしているのを見たり、そんな現実から、より虚無感だったり、ペシミスティックな曲を書くことが増えているような気がします。
──今後のライブやリリースの予定についても聞かせて下さい。10/7にNon Plus Ultraでライブが決まっています。さらにLAのアーティストDakoda Blueとコラボレーションした曲を近々リリース予定です。また今回のEPとは違った、ギターサウンドも聴ける曲に仕上がっているので、ぜひ楽しみに待っていただけると嬉しいです。
いつかまた日本でもライブがしたいですね。
──楽しみにしております!
とりわけ”Gray City”についてのコメントにも見られるように、ステレオタイプなイメージとは違ったLAのリアルな風景と、そこに音によって描かれた心象風景が重なることで、RUBY LEMONの音楽が作られていることが、インタビューを通じて理解できた。
どこに住もうとも、結局は自分自身の音楽を作るしかない──テーマも曲調もそれぞれ異なる3曲に一貫しているのは、そんな音楽家としての姿勢そのものなのかも知れない。RUBY LEMON
16歳からギター片手におもちゃのキーボードなどを使ってMTRで作曲を始める。作詞作曲、トラックメイク、ミックス、マスタリング、ほとんどのアートワークも自身で手掛け、浮遊感のあるドリーミーなサウンドが特徴的なエレクトロポップを展開している。2021年より福岡からUSロサンゼルスに拠点を移し、ハードウエアを駆使したライブも行っている。
She started composing music at the age of 16 with a guitar and a toy keyboard using a MTR. She writes lyrics, makes tracks, mixes, masters, and creates most of the artwork for her music, creating electro-pop with a dreamy, floating sound. In 2021, She moved her base from Fukuoka, Japan to Los Angeles, and has been performing live music with hardware.
Information https://bento.me/rubylemon/
Instagram / https://www.instagram.com/rubylemonmusik
Bandcamp https://rubylemon.bandcamp.comRUBY LEMON / MASAMI TAKASHIMA split EP “Comingle”
Digital & Cassette Tape release
SideA RUBY LEMON
Honey Bee
Never Coming Back
Gray City
SideB MASAMI TAKASHIMA
Sometimes
Summer Dress
Rain In May
◾︎ 特設サイト: https://twin-ships.com/splitep-comingle/
◾︎ 通販 : https://twin-ships.com/store/
◾︎ Bandcamp : https://twin-ships.bandcamp.com/album/comingle-2
◾︎ Streaming Link : https://linkco.re/auR2ffqQ?lang=ja