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Masami Takashima interview [2]
2023-09-20 update
アルバム『Polyphonic』をリリースしたMasami Takashimaのロング・インタビュー第2回は、いよいよアルバムの内容に踏み込んでいく。また、今回のアルバムに客演したミュージシャン──mineo kawasaki、波多野祐文、Hisayo、Ichito MoriといったMasami Takashima独自のネットワークから集ったこの個性的な面々について、自身の言葉で語って貰った。
(取材/構成 Kotetsu Shoichiro)kotetsu-shoichiro.com
[2]アルバム『Poliphonic』制作~参加ミュージシャンについて
──では、アルバム『Polyphonic』のお話に入っていこうと思います。いつ頃からアルバムの制作を始めたのでしょうか?
前回のフルアルバムを出したのが2016年の『FAKE NIGHT』で、それをリリースした後もすぐ、次のアルバムを目指して曲を作っていたのですが、曲自体はいっぱい出来ても、なかなか完成しなくて……シングルを出したり、ライブをやったり、合間にいろんな活動はしていたんですけど、アルバムとしてはなかなかまとまらなくて。その状態が凄く長く続いたんですが、コロナを経て、ライブを再開した結果、自分の中で「演奏をする」っていうことが再燃して来たんですね。それで、ライブっぽい、ライブでの演奏を基調にしたアルバムにしようと思ったのが、今回のアルバムの出発点ですね。
あと、先ほども『MIX BUS』の会場として名前を出した燦庫が2022年にオープンして設置されてるピアノを弾いた時に、その感覚が凄く新鮮だったんです。その「新鮮さ」に次のアルバムは寄せていこう、と思いました。それで当初は、この数年に出したシングルを、(ライブでやる時と同じように)mineoくんのドラムで録り直してアルバムに収録しよう、と思ったんですけど、レコーディングのことを考えていくうちに、やっぱり欲が出てきて(笑)あれもこれも作りたいし出したい、と思ってる内に、作り直したり新しいトラックや新曲が増えていった感じです。レコーディングまでの制作期間で言えば半年くらいで、自分としては凄く短い期間で作りましたね。最初に、というか一番古いのは『Kotoba』という曲で、去年の夏あたりに一度ミックスまでほぼ出来てたんですが、レコーディングでドラムを改めて入れ直して最終的に完成しました。
──『Kotoba』は、コミュニケーションの難しさという普遍的なテーマにも見えますが、アーティストとしての自己言及というか、作詞、言葉を書くことそのものに対する難しさみたいなものも感じられる内容ですよね。
ずっと長い間、歌詞のスランプがあったんです。納得のいく歌詞にならなくて……書いては、書き直して、っていうのを繰り返してて。それで時が止まっていたような所はありますね。実は波多野さんのライブを見に行って帰った日になぜかだーっとこのトラックの歌詞が仕上がったんです。歌詞の内容はその日のライブの内容とはまったく関係ないのないものだけど、言葉が言葉を呼んだ、みたいなそんな感じで以降は割と他の歌詞もすーっと制作が進みました。きっかけになることって思いがけないところにあることが多いですね。
──今回、アルバムに参加したミュージシャンについても、Masamiさんの言葉で語っていただければと。まずは、先ほどからも何回も名前が出ているドラマーのmineo kawasakiさん。この人は僕も面識があって、最近レコードで出したソロ作もクールでしたが、近年はMasamiさんとデュオでライブしてますよね。9曲中、5曲でドラムを叩いていますが、どのように作業を進めたのでしょうか?
『Kotoba』だと、先ほどのようにほぼ完成したトラックがあって。そのビートの部分をはmineoくんなりに肉付けしたり、差し引いたりしながら演奏してくれて。他の曲も先に作ったデモを聴いて判断してもらうという形で『Kotoba』に近い作り方なんですけど、『現象』とかはイントロの808風の音を使ったビートのループに重ねる形で全然違うものを入れてほしい、おまかせしたいと伝えました。ドラム2本、他にもアフロビート的な音も入っています。岩谷さんも含めて三人でアイデアを出しながら録音しました。
──『現象』の中間の部分なんかは、ドラムが前面に出てきててカッコいいですよね。そもそもmineoさんとはいつ頃知り合ったんでしょうか?最初は井川さん(高松のライブハウスTOONICE~燦庫の店長で、mineo kawasakiとはcowbellsというバンドを組んでいる)が「Masamiさんと音楽的に合いそうだから」と紹介してくれたんですけど、少し時が経って『FAKE NIGHT』のレコ発のライブでドラムをお願いしたのが最初で、現在までずっとライブではとてもお世話になってますね。シンセを使ったり、トラックに合わせたり、そういったクラブ・ミュージックとの親和性や、エレクトロニクスを使用した演奏のスキルのあるドラマーなので、演奏では曲の意図を汲み取って、凄く考えてくれてるな、と感じるのでとてもありがたいですね。
──tokyo pinsalocksやa flood of circleで知られるHisayoさんはどうでしょうか。『屋根の上』『街の間』にベースで参加しています。
Hisayoちゃんは、まだ私が福岡に住んでいる時に、Miu MauでKieth Flack(福岡のクラブ/ライブハウス)で企画した時に、tokyo pinsalocksに出て貰ったのが最初の繋がりですね。そこからソロやバンドでお互いにイベントに呼ばれたり、呼んだり。私もmiu mauのメンバーもpinsalocksの中で一緒に演奏したりしているし、COET COCOEH名義の東京レコ発の時にも全曲ベース弾いてくれたり、数年前にも渋谷とか徳島でmineoくんとHisayoちゃんとのバンドセットで演奏したりなどもあります。同い年だし、音楽友達といった感じでずっと仲良くさせて貰ってます。今回のゲストの中では一番古い付き合いですね。笹塚ボウルでのオールナイトのパーティーや、代官山UNITでアートと音楽のフェスやったり企画力もある方ですが、今は年中ツアー廻っていてすごく忙しい中、常に前向きに音楽をやっていて凄いなあ、と思います。ベースの録音ではリファレンス的な雰囲気を伝えてから録音データを送ってくれるまでがすごく早くて。Hisayoちゃんのうねるようなフレーズがビートをより前に出してくれていて、『屋根の上』は特にベースが重要な要素を含んでいます。
──『Anywhere』『現象』では、People In The Boxの波多野裕文さんがそれぞれギター、シンセサイザーで参加されていますよね。どちらで知り合ったのでしょうか?
波多野さんとは共通の知人がいて実は香川で知り合ったんです。波多野さんのソロ・ライブもPeople In The Boxのライブも観て、それから音楽の話もしたり、「こんな曲出来ました」って連絡したりして感想聞かせてもらったり……、私の企画(PIANO&RHYTHM)に、波多野さんがフラッとやって来てくれて。その時、今度アルバムのレコーディングをするんですっていう話を何気なくしたら「ギター弾こうかな~」と気軽に言ってくれて、えっ、本当ですか?と思ったんですけど、改めてオファーしてそこで話が進んで行った感じです。
──波多野さんとの共作はどのような形で進められたんでしょうか?
今回、mineoくん以外は各自でレコーディングした音をデータを送って貰って、それを元にやり取りして作業を進めました。音を送ってもらったんですが、それを聴いた時は「ああ、なるほどこう来たか!」というか、別の視点というか、その楽曲が持つ意図を伝えるための音の配置やサウンドメイクで、「全体」を考えて作られてる方なんだな、と改めて思いました。波多野さんの演奏が入ったことで深みが増して、遠くまで届けるための俯瞰した視点が音にも反映されて勉強にもなりました。楽曲に対する取り組みについても丁寧なメールもいただいて、お忙しい中にも関わらず、ありがたかったですね。──Test Patternとして知られるIchito Moriさんについても聞かせて下さい。
以前、Test Patternのライブを観に行ったことがあって、その時に少しだけお話したんですが、波多野さんの時と同じく『PIANO & RHYTHM』の時に、Ichito Moriさんがお客さんとして来て下さったのが直接のきっかけですね。もともとIchito Moriさんが私のアンビエントのアルバムを聴いて下さったり、私もIchito Moriさんのソロ作品を聴いていたり、共通の友人もいます。IchitoMoriさんのソロ作品のピアノもサウンドもすごくよくて。「惑星」と音が合いそうと思ったこともあり、お声かけしてシンセサイザーをお願いしました。データでのやり取りでしたが、メールでも的確にわかりやすく伝えてくださるので、スタジオで音作りしてるみたいですごく面白かったです。実はmineoくんに演奏をお願いしている当初から私以外にもう一人シンセがいれば…と考えることがたびたびあって、そういうことを普段から考えていたから、今回香川からも比較的ちかいところに住んでる鍵盤奏者にお願いすることができてよかったです。IchitoMoriさんに限らずですが、曲や音については何回もやり取りして……細かく対話を重ねてることで、私も自分の曲を俯瞰して客観視することが出来ました。ゲストのみなさん、制作の進め方がそれぞれに違ったのでとても勉強になることが多かったです。それと、関わってくれたミュージシャンは皆、普段は違うスタイルやフィールドで活動している人たちで、こういう内容だろうなと想像できないような客演の形に仕上げたいな、と思っていました。
次を読む
[3]制作の裏側~アルバムについて更に深掘り——————————————
Masami Takashima interview
[1]アルバム制作に至るまで~新たな自主企画『MIX BUS』について
[2]アルバム『Poliphonic』制作~参加ミュージシャンについて
[3]制作の裏側~アルバムについて更に深掘り———————————————
アルバム特設ページ
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